我々、補聴器専門店が取り扱っている補聴器は、
対面販売が基本です。
昨今、補聴器メーカーからOTC補聴器なるものが通販等で流通しております。
OTCとは、Over the Counter の略です。
聴力検査を行わず、電気屋さん、通販等で購入し、
スマートフォンで自身の聴力の閾値を決めて使用する機器です。
聴力の適応範囲は今のところ、軽度~中度の方が対象です。
日本では、以前からオムロン社のレデイーメイド補聴器が流通しております。
自分で耳せんを選択し、トリマーで全体的な音の調整を行います。
聴力に合っていないため、聴覚的にはどうなのでしょう。
当店にも、通販で購入した補聴器、集音機を持参され、
「どうにか使えるようにしてください」と駆け込みれる方がよく来られます。
残念ながらどうすることもできません。
結果、国民生活センターへのクレームは後を立ちません。
「医療機器でここまでクレームが多いのは補聴器だけだ」
と販売店協会理事長の青戸氏がよくおっしゃられています。
欧州諸国では、補聴器を購入する際は、
病院を介してでしか補聴器は購入できませんでした。
しかし、以前から「アメリカの貧困層が補聴器を買えない」
という事が問題になっていたことから、
さまざまな議論がなられ、
OTC補聴器の販売が解禁されましたとの事です。
2022年11月2日、
アメリカのスターキー補聴器の
セミナーに参加してきました。
その際、OTC補聴器についての説明もありました。
「OTC補聴器はアメリカ国民を幸せにしますか?」
という質問に対して、スターキー社の回答は、
「OTC補聴器はアメリカ国民を幸せにはしない」
でした。
すでに、世界の一流補聴器メーカーがOTC補聴器を流通させています。
これの影響により、今度、補聴器満足度は低下する事が予想されます。
日本全体の補聴器ユーザーを対象とした補聴器満足度は約38%と
欧州諸国と比べて非常に低く推移しております。
しかし、認定補聴器技能者から購入したユーザーを対象
とした補聴器満足度は約78%と高く推移しております。
私は、補聴器の専門家として
「日本の補聴器満足度の底上げに貢献したい」
という信念の基、日々、お客様と接しております。
聞こえは十人十色であり、調整のアプローチは何100通りあります。
それに購入後のケアはどうするのでしょうか。
耳あか、汚れのつまりはどうするのでしょう。
既成の耳せんが合わない人はどうするのでしょう。
日本は特に湿度が高い国です。
湿気取りや、寒暖差による結露はどうするのでしょう。
OTC補聴器は安価といっても10万円以上する機器もあります。
それなら普通に補聴器を作成したほうがよいのでは?
なので今のところ、
「OTC補聴器は容認できない(?)」
というのが私の意見です。
しかし、決めつけもよくはありません。
古い考えに固執していては、時代に取り残されてしまうでしょう。
OTC補聴器については、今後も注目していきます。
ネット社会において、情報過多の時代です。
「芸能人が宣伝しているんだから大丈夫」
「新聞公告に掲載されているから安心」
「テレビCMで放映されているのだから良いものだ」
「誰でも知っている企業だから間違いない」
このような考えは今すぐにリセットしてください。
自身で精査し、ご家族、ご友人にも相談してください。